刺激をしても卵胞が育たない。採卵に臨んでも、採れる卵子が1個か2個。あるいはゼロのこともある。
採卵数が少ないことは、体外受精のあらゆる工程に響きます。受精する数が減り、胚盤胞に到達する数が減り、移植できる胚が残らない。PGT-Aを行う場合はなおさらです。
PRP Plusは、この「採卵数」に働きかけることを主な目的とした治療です。
ご自身の血液から取り出した血小板由来の成長因子を、卵巣に直接注入します。卵巣の環境を整えることで、刺激に反応する卵胞の数を増やすことを狙います。
なぜ卵巣に注入するのか
卵巣の機能が低下する原因のひとつに、卵巣内の血流と微小環境の悪化があります。
酸素、栄養、ホルモンの供給が滞ると、卵胞は十分に育ちません。卵巣機能不全の状態では、血管新生に関わる分子のネットワークが大きく乱れていることが報告されています。特にVEGF(血管内皮増殖因子)を介した卵巣の血流は、卵胞形成を左右する重要な因子と考えられています。
重要なのは、この状態は不可逆ではないと考えられている点です。損なわれた卵巣の微小環境が回復すれば、卵胞の発育が再び促される可能性がある。これがPRPを卵巣に注入する理論的な根拠です。
通常のPRPとの違い
「PRP」と「PRP Plus」は別のものです。日本の患者様からも混同のご質問をよくいただきます。
一般的なPRPは、採血した血液をその場で遠心分離して用います。これに対しPRP Plusは、GTP(Good Tissue Practice)基準の専用施設で調製されます。台湾の行政院衛生福利部が公告する人体細胞組織の優良操作規範で、製造過程での汚染と品質のばらつきを防ぐための基準です。
成長因子の含有量にも差が報告されています。
- PDGF-BB
通常のPRPの約2.4倍 - Angiogenin(血管新生因子)
通常のPRPでは検出限界以下であるのに対し、PRP Plusでは高濃度に検出 - TNF-α
通常のPRPと比較して約60%低減
対象となる方
- 採卵しても採れる卵子が少ない方(低反応/POR)
- AMHが低い、AFC(胞状卵胞数)が少ないと言われた方(卵巣予備能低下/DOR)
- 早発卵巣不全(POI)と診断された方
- 上記に加えて、子宮内膜が薄い方(7mm未満)、着床不全を繰り返している方にも適用されています
卵巣に対する注入と、子宮内膜に対する注入では目的が異なります。
卵巣への注入は採卵数を増やすため、子宮内膜への注入は内膜の厚さと着床環境を改善するためです。
どちらが適しているかは、検査結果をもとにご相談のうえ決定します。
治療の流れ
適応の評価
医師が検査結果と既往歴を確認し、PRP Plusが適しているかを判断します。
採血
50mLを採血します。
調製
GTP基準の専用施設で分離・処理を行い、成長因子の測定レポートが発行されます。
卵巣への注入
経腟超音波ガイド下に、採卵と同じ穿刺針を用いて卵巣に注入します。
経過観察と次周期の計画
AMH、FSH、AFCの推移を確認しながら、次の採卵周期を組み立てます。