卵子提供ドナーの要件と検査体制
卵子提供を検討されるとき、最も気になるのは、おそらく「どんな方がドナーなのか」ということではないでしょうか。
どんな年齢の、どんな健康状態の方が卵子ドナーになるのか。どこまで検査されているのか。感染症や遺伝性の病気は確認されているのか。
台湾では、これらの点が法律で定められています。加えて、当院では法律の要件よりも厳しい独自基準を設けて実施をしています。
このページでは、日本語では情報の少ない台湾の卵子ドナー制度について、法律の条文、当センターの登録基準、実際に行われる検査内容まで、具体的にご説明します。
| 層 | 誰が定めるか | 内容 |
| 第1層:法定要件 | 台湾政府(人工生殖法) | 年齢、無償性、提供回数、必須の検査項目 |
| 第2層:クリニック基準 | 医療機関 | 法律より厳しい年齢上限、BMI、生活習慣など |
| 第3層:国による審査 | 衛生福利部 国民健康署 | 過去の提供歴の照合、親族関係の確認 |
第1層|法律で定められたドナーの要件
人工生殖法第8条は、卵子ドナーの要件を次のように定めています。
年齢
法律上、卵子ドナーになれるのは20歳以上40歳未満の女性です。
ですが、当院ではより年齢の厳格な基準を設け、20歳以上30歳までに制限しています。
検査・評価の結果、提供に適していると判断されること
人工生殖法第7条に基づき、提供の前に医療機関が検査と評価を行います。法定の検査項目は次の4分類です。
- 一般的な心理および生理状態
- 家族疾患歴(本人および四親等以内の血族の遺伝性疾患の記録を含む)
- 生殖の健康に支障をきたす遺伝性疾患または感染性疾患
- その他、主管機関が公告する事項
「四親等以内」まで家族歴を確認する点が、台湾の制度の特徴のひとつです。本人の検査結果だけでなく、血縁者の疾患歴まで含めて評価されます。
ドナーには栄養費のみの支払いであること
生殖細胞の売買は法律で禁じられています。営利目的で生殖細胞の売買や仲介を行った場合、2年以下の懲役または20万〜100万元の罰金が科されます(第31条)。
ただし、ドナーは検査・投薬・採卵手術という実際の負担を負います。そのため、受け取る側のご夫婦が、国の定めた上限内で、ドナーの検査費・医療費・休業損失・交通費を負担することが認められています。
卵子ドナーの場合、この上限は99,000台湾ドルと公告されています(人工生殖法第8条第2項に基づく行政院衛生署公告)。これは卵子の価格ではなく、身体的負担と時間的損失への補償です。
提供歴がないこと、または過去の提供で出産に至っていないこと
条文は「未曾捐贈或曾捐贈而未活產且未儲存」と定めています。すなわち、
- これまで一度も提供したことがない方
- または、過去に提供したが、受け取ったご夫婦が出産に至っておらず、かつ卵子や胚が保存されていない方
このいずれかに該当する場合にのみ、提供が認められます。
一度の提供で出産に至った場合、そのドナーは二度と卵子を提供できません。
この点は法律で明確に定められており、医療機関は提供の前に国民健康署への照会を行い、回答を得るまでは使用できないと規定されています(第8条第3項)。
第2層|当院基準のドナーの要件
法律の要件は「20歳以上40歳未満」ですが、当院ではこれよりも厳しい独自の基準を設けています。
| 項目 | 当院の基準 | 法律の要件 |
| 年齢 | 20〜30歳 | 20歳以上40歳未満 |
| AMH | 原則3.5以上 | 規定なし |
| BMI | 18〜23 | 規定なし |
| 卵巣機能 | 健全であること | 規定なし(検査・評価による) |
| 生活習慣 | 薬物使用などの不良習慣がないこと | 規定なし |
| 生活習慣 | 薬物使用等の問題がないこと | 規定なし |
| 疾患 | 生殖の健康に支障をきたす遺伝性疾患・感染性疾患がないこと | 同左 |
ドナーに実施される検査
法定の4分類(心理・生理状態/家族疾患歴/遺伝性疾患・感染性疾患/その他)に基づき、具体的には次のような検査が行われます。
問診・家族歴の確認
- 本人の既往歴、服薬歴、手術歴
- 本人の精神疾患の有無
- 本人の生活習慣(喫煙、飲酒、薬物使用の有無)
- 家族の遺伝性疾患に関する問診
- 家族の精神疾患に関する問診
血液検査
感染症
- HIV
- 梅毒(梅毒血清反応)
- B型肝炎(HBs抗原)
- C型肝炎(HCV抗体)
- 淋病(淋菌感染)
- クラミジア感染
遺伝性疾患
- 糖尿病
- サラセミア(地中海貧血)
- 染色体核型分析
- G6PD欠損症(蚕豆症)
- 脆弱X症候群スクリーニング(FXS)
- 脊髄性筋萎縮症(SMA)
卵巣機能、ホルモン
- AMH(抗ミュラー管ホルモン)
- 血液型
- 基礎ホルモン値
超音波検査
- 経腟超音波により、卵巣の状態と胞状卵胞数(AFC)を確認します。AMHとあわせて、刺激周期での反応性を予測します。
尿検査
- 一般的な尿検査に加え、薬物使用の有無を確認する項目が含まれます。
ドナー登録から提供までの仕組み

登録の申し込み
提供を希望する女性が、クリニックの公式LINEまたは専用フォームから登録を申し込みます。個人情報シートに、年齢、身長・体重、血液型、既往歴、家族の疾患歴などを記入して提出します。
書類審査
提出された情報をもとに、まず書面での適格性審査が行われます。年齢、BMI、既往歴、家族歴の段階で条件に合わない場合は、この時点で対象外となります。
健康診断と卵巣機能評価 等
書類審査を通過した方に対して、クリニックが健康診断と卵巣機能評価等を実施します。費用は当院の負担で行います。
ドナーマッチング
ドナーマッチングが行われ、ドナー候補者を患者様に提案します。
国民健康署への申請と審査
当院側で、ドナーの資料と受け取るご夫婦の資料をあわせて国民健康署へ提出します。
ここで確認されるのは、主に次の点です。
- ドナーが過去に提供し、出産に至っていないか(データベース照合)
- ドナーとご夫婦の間に、法律で禁じられた親族関係がないか
- 法定の検査・評価が適切に実施されているか
この審査には約1か月を要します。承認が下りるまで、そのドナーの卵子を使用することはできません。
採卵周期
審査完了後、ドナーの月経2日目から排卵誘発の周期に入ります。採卵までの間に1〜3回の通院があり、超音波と血液検査で卵胞の育ち具合を確認しながら投薬量を調整します。
月経13日目前後に採卵手術を行います。
営養費の受け取り
採卵完了後、法定上限(99,000元)の範囲内で営養費が支払われます。